定款変更認可要件とその後:前編

弊所へのお問い合わせ・ご相談の中で一番多いのが、医療法人の定款変更認可申請です。

今回は少し根拠規定を含めて細かく解説していきます。

・診療所の移転
・分院の開設
・既存の診療所の拡張
・診療所の廃止
・診療所名の変更
・法人名称の変更
・附帯業務の開設・廃止

上記のようなことをしようとするときには、事前に医療法人を管轄する都道府県知事など(以下「都道府県知事」)の認可が必要となります。
例外的に主たる事務所の所在地変更及び公告の方法の変更については、届出事項とされています。(Cf.医療法施行規則第33条の26)
ただし、主たる事務所の所在地の変更が、現在の都道府県から別の都道府県となるような場合には、監督権限のある都道府県知事の変更となりますので、この場合には、定款の変更には都道府県知事の認可が必要とされていますのでご注意ください。

認可基準

先ほどもお伝えした通り、医療法人の定款を変更するのには要件がある≒自由にいつでも定款が変更できるわけではありません。
法第54条の9第4項において要件が定められています。

第五十四条の九 社団たる医療法人が定款を変更するには、社員総会の決議によらなければならない。
2 財団たる医療法人が寄附行為を変更するには、あらかじめ、評議員会の意見を聴かなければならない。
3 定款又は寄附行為の変更(厚生労働省令で定める事項に係るものを除く。)は、都道府県知事の認可を受けなければ、その効力を生じない。
4 都道府県知事は、前項の規定による認可の申請があつた場合には、第四十五条第一項に規定する事項及び定款又は寄附行為の変更の手続が法令又は定款若しくは寄附行為に違反していないかどうかを審査した上で、その認可を決定しなければならない。
5 医療法人は、第三項の厚生労働省令で定める事項に係る定款又は寄附行為の変更をしたときは、遅滞なく、その変更した定款又は寄附行為を都道府県知事に届け出なければならない。
6 第四十四条第五項の規定は、定款又は寄附行為の変更により、残余財産の帰属すべき者に関する規定を設け、又は変更する場合について準用する。

抽出してみると

社員総会の決議

都道府県知事の認可
(受けないと定款変更の効力は生じない)

+

その定款変更認可手続きが法令に
違反するものではないこと

という手順を踏まなければならないことがわかります。

社員総会の開催については今回は省略し、
(過去記事ございますので、そちらをご参照ください)
問題は②の認可です。
都道府県都知事は医療法第45条第1項に規定されている事項と定款変更自体の手続きが法令やその定款変更をしようとする医療法人の定款に違反していないかチェックをし、認可をするかしないか決定しなければならないとあります。
では医療法第45条第1項を、見てみましょう。

第四十五条 都道府県知事は、前条第一項の規定による認可の申請があつた場合には、当該申請にかかる医療法人の資産が第四十一条の要件に該当しているかどうか及びその定款又は寄附行為の内容が法令の規定に違反していないかどうかを審査した上で、その認可を決定しなければならない。

資産要件とその変更する定款の内容が法令の規定に違反していないかどうかという点がチェックされるということですね。

まずは、資産要件の医療法第41条とは?

第四十一条 医療法人は、その業務を行うに必要な資産を有しなければならない。
2 前項の資産に関し必要な事項は、医療法人の開設する医療機関の規模等に応じ、厚生労働省令で定める。

何だか漠然としています。


第2項の規定する厚労省令(医療法施行規則)を見てみましょう。

(医療法人の資産)
第三十条の三十四 医療法人は、その開設する病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院の業務を行うために必要な施設、設備又は資金を有しなければならない。

業務を行うために必要な施設、設備または資金を有していないといけないということですね。
具体的には、
・建物物件があること
・診療に必要な医療機器等があること
または
・診療所を運営するにあたり必要な資金を有していること
が挙げられると思います。

そしてこの施行規則にプラスα、平成19年3月30日の通知があります。

(1) 規則第30条の34の規定は、医療法人の資産要件として定められてきた自己資本比率に関する要件を廃止することとし、病院、診療所又は介護老人保健施設を開設する医療法人は、開設する病院、診療所又は介護老人保健施設に必要な施設、設備又は資金を有しなければならないものとしたこと。
(2) 医療法人の施設又は設備は法人が所有するものであることが望ましいが、賃貸借契約による場合でも当該契約が長期間にわたるもので、かつ、確実なものであると認められる場合には、その設立を認可して差し支えないこと。
ただし、土地、建物を医療法人の理事長又はその親族等以外の第三者から賃貸する場合には、当該土地、建物について賃貸借登記をすることが望ましいこと。また、借地借家法(平成3年10月4日法律第90号)に基づき、土地、建物の所有権を取得した者に対する対抗要件を具備した場合は、賃貸借登記がなくても、当該土地、建物の賃貸借を認めても差し支えないこと。なお、賃貸料については、近隣の土地、建物等の賃貸料と比較して著しく高額なものである場合には、法第54条(剰余金配当の禁止)の規定に抵触するおそ れがあるので留意されたいこと。
(3) 医療法人の設立を認可するに当たって、一定期間の医療施設の経営実績を要件とすることは望ましくないこと。 なお、新たに医療施設を開設するために医療法人を設立する場合には、2か月以上の運転資金を有していることが望ましいこと。
(4) 医療法人の設立に際して、現物拠出又は寄附すべき財産が医療法人に不可欠のものであるときは、その財産の取得又は拡充のために生じた負債は、当該医療法人の負債として取り扱って差し支えないこと。ただし、負債が財産の従前の所有者が当然負うべきもの又は医療法人の健全な管理運営に支障を来すおそれのあるものである場合には、医療法人の負債として認めることは適当ではないので、設立の認可に当たっては十分留意されたいこと。

医政発第0330049号 平成19年3月30日 厚生労働省医政局長発通知 筆者抜粋

 施行規則第30条の34条の補足で、建物(必要に応じて土地)や設備については、医療法人が所有していることが望ましいけれども、賃貸借契約でも大丈夫(⇒賃借料に注意)とことがわかります。

また、上記通知の内容は医療法人を設立する際の資産要件のことのみを記しているようですが、医療法第41条の規定がありますので、設立後についてもこれらの通知内容が適用されるものと解されます。

これらの資産要件を疎明するため、定款変更認可申請では
事業計画書
収支予算計画書
だけでなく
・決算書
・金銭消費貸借契約書
・賃貸借契約書
・リース契約書
・内装工事請負契約書
・医療機器の見積書
など定款を変更する内容に応じて様々な写し資料を添付をしていきます。
これだけでもかなりのボリュームとなりますが、さらにその変更する定款の内容が法令の規定に違反していないかどうかという点もチェックが入ります。
後編は、医療法人は医療法上どのような規定を守らなければならないかと提出書類について記したいと思います。

ご興味のある方は、ぜひお付き合いください。


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