今回のコラムは「衛生検査所」についてです。
衛生検査所自体数が少ないものの、最近ご興味ある方が多くなっている印象ですので、ご紹介させていただきます。
衛生検査所とは?
衛生検査所とは、人体から排出された検体、または採取された検体について医療機関等から委託を受け、各検査を行う施設です。
この衛生検査所を開設するためには「臨床検査技師等に関する法律」に基づき、その所在地を管轄する都道府県や政令指定都市、中核市、特別区の長から登録を受けなければなりません。
具体的な要件とは?
登録予定の衛生検査所で行われる予定の検査項目等により、細かな要件がかかってきますが、ここでは「人・構造設備・準備しなければならない作業書等の要件」をご紹介いたします。
また、今回はRⅠを有しない衛生検査所の場合となります。
人の要件
- 管理者
3年以上検査業務の実務経験を有する医師、もしくは臨床検査技師
※臨床検査技師を管理者とする場合には、3年以上検査業務の実務経験を有する指導監督医を選任する必要があります。 - 精度管理責任者
6年以上検査業務の実務経験を有し、精度管理についても3年以上の実務経験を有する医師、もしくは臨床検査技師 - 遺伝子関連・染色体検査を行う場合には、その精度確保にかかる責任者
遺伝子関連・染色体検査の業務に関して3年以上の経験を有する医師、もしくは臨床検査技師
または、大学院、大学、短期大学、専門学校又は高等専門学校において、分子生物学関連科目(分子生物学、遺伝子検査学、細胞遺伝学、人類遺伝学、微生物学、生化学、免疫学、血液学、生理学、病理学、解剖学、動物細胞工学、生物科学等)を履修した者であって、3年以上遺伝子関連・染色体検査業務の実務経験を有する者 - 職員の数
① 微生物学的検査、免疫学的検査、血液学的検査、病理学的検査、生化学的検査、尿・糞便等一般検査、遺伝子関連・染色体検査のうち、一の検査のみ→1人以上
② 上記①の検査のうち、二以上の検査を行う場合→2人以上
③ 上記①の検査のうち、微生物学的検査、血液学的検査及び生化学的検査のいずれをも含む三以上の検査をする場合→3人以上
構造設備
- 検査室の面積
① 微生物学的検査、免疫学的検査、血液学的検査、病理学的検査、生化学的 検査、尿・糞便等一般検査及び遺伝子関連・染色体検査のうち、一の検査のみ→20㎡以上
② 上記①の検査のうち、二以上の検査をする場合→30㎡以上
③ 上記①の検査のうち、三以上の検査をする場合→40㎡以上
④ 上記①の検査のうち、四以上の検査をする場合→50㎡以上 - 検査用機械機器
その衛生検査所において、検査する検査内容に応じて必要な機器は変わりますが、共通して必要となるのは下記の通りです。
① 電気冷蔵庫
② 電気冷凍庫
③ 遠心機 - その他細かい事項
1 検査室は、検査室以外の場所から区別されており、十分な照明及び換気がされていること
2 微生物学的検査を行う検査室は、専用のもので他の検査室と明確に区別されていること
3 遺伝子関連・染色体検査の病原体核酸検査は、検査の前処理の工程まで専用の検査室で行うことが望ましいこと
4 防塵および防虫のための設備を有すること
5 廃水および廃棄物処理に要する設備または器具を備えていること
6 検査業務に従事する者の消毒のための設備を有すること
整備する書類等
- 次の項目が記載された検査案内書
1 検査方法
2 基準値及び判定基準
3 医療機関に緊急報告を行うこととする検査値の範囲
4 検査に要する日数
5 測定を委託する場合にあっては、実際に測定を行う衛生検査所等の名称 (形態学的検査及び画像認識による検査を含む)
6 検体の採取条件、採取容器及び採取量
7 検体の保存条件
8 検体の提出条件
9 検査依頼書及び検体ラベルの記載項目
10 検体を医療機関から衛生検査所(他の衛生検査所等に測定を委託する場合にあっては、当該衛生検査所等)まで搬送するのに要する時間の欄
11 委託元と取り決めた検体受領場所 - 標準作業書
1 検体受領標準作業書 | 1 医療機関等において検体を受領するときの確認に関する事項 2 受領書の発行に関する事項 3 検体受領作業日誌の記入要領 4 作成及び改定年月日 |
2 検体搬送標準作業書 | 1 一般的な搬送条件及び注意事項 2 搬送時間又は搬送条件に特に配慮を要する検査項目及び当該配慮すべき事項 3 保存条件ごとの専用搬送ボックスの取扱に関する事項 4 衛生検査所等への搬送の過程において一時的に検体を保管するときの注意事項 5 検体搬送作業日誌の記入要領 6 作成及び改定年月日 |
3 検体受付及び仕分標 準作業書 | 1 衛生検査所において検体を受け付け、及び仕分けるときの確認に関する事項 2 検体受付及び仕分作業日誌の記入要領 3 作成及び改定年月日 |
4 血清分離標準作業書 | 1 血清分離作業前の検査用機械器具の点検方法 2 血清分離室の温度条件 3 遠心器の回転数並びに遠心分離を行う時間及び温度条件 4 遠心分離に関して特に配慮を要する検査項目及び当該配慮すべき事項 5 血清分離作業日誌の記入要領 6 作成及び改定年月日 |
5 外部委託標準作業書 | 1 医療情報の送付方法 2 検体の送付方法 3 検査の外部委託を行う場合の精度管理及び結果評価の方法 4 委託検査管理台帳の記入要領 5 作成及び改定年月日 |
6 検査機器保守管理標 準作業書 | 1 常時行うべき保守点検の方法 2 定期的な保守点検に関する計画 3 測定中に故障が起こった場合の対応(検体の取扱いを含む)に関する事項 4 検査機器保守管理作業日誌の記入要領 5 作成及び改定年月日 |
7 測定標準作業書 | 1 検査室の温度及び湿度条件 2 検査室において検体を受領するときの取扱に関する事項 3 測定の実施方法 4 検査用機械器具の操作方法 5 測定に当たっての注意事項 6 基準値及び判定基準(形態学的検査及び画像認識による検査の正常像及び判定基準を含む) 7 異常値を示した検体の取扱方法(再検査の実施基準及び指導監督医の役割を含む) 8 測定作業日誌の記入要領 9 試薬管理台帳の記入要領 10 温度・設備管理台帳の記入要領 11 作成及び改定年月日 ※「測定原理」(検体と試薬の化学反応等によってどのような物質が生じ、どの物質を測定するか等)、「臨床的意義」(病因により、 どのような物質が増加するか等)が記載されていることが望ましい。 |
8 精度管理標準作業書 | 1 精度管理に用いる試料及び物質の入手方法、取扱方法及び評価方法 2 精度管理の方法及び評価基準 3 外部精度管理調査の参加計画 4 外部精度管理調査の評価基準 5 統計学的精度管理台帳の記入要領 6 外部精度管理台帳の記入要領 7 作成及び改定年月日 |
9 検体処理標準作業書 | 1 検体ごとの保管期間及び条件 2 検体ごとの返却及び廃棄の基準 3 検体保管・返却・廃棄処理台帳の記入要領 4 作成及び改定年月日 |
10 検査依頼情報・検査結果 報告情報標準作業書 | 1 情報の記録媒体及び交換方法に関する事項 2 情報の規格及び内容確認の方法に関する事項 3 情報の追加及び修正の方法に関する事項 4 検査依頼情報・検査結果情報台帳の記入要領 5 検査結果報告台帳の記入要領(血清分離のみを行う衛生検査所を除く) ※ 血清分離のみを行う衛生検査所は、血清分離標準作業書に記載されるものであること。 6 作成及び改定年月日 |
11 苦情処理標準作業書 | 1 苦情処理の体制(指導監督医の役割を含む。) 2 苦情処理の手順 3 委託元及び行政への報告に関する事項 4 苦情処理台帳の記入要領 5 作成及び改定年月日 |
12 教育研修・技能評価標準 作業書 | 1 検査分類ごとの研修計画に関する事項 2 技能評価の手順 3 技能評価基準及び資格基準に関する事項 4 教育研修・技能評価記録台帳の記入要領 5 作成及び改定年月日 |
- 作業日誌
上記標準作業書に記載された作業日誌の記入要領に従い作成されていること。
1 検体受領作業日誌
2 検体搬送作業日誌
3 検体受付及び仕分作業日誌
4 血清分離作業日誌
5 検査機器保守管理作業日誌6 測定作業日誌 ※血清分離のみを行う衛生検査所にあっては、36の作成を要しない。 ※血清分離を行わない衛生検査所にあっては、4の作成を要しない。
- その他の作業日誌
1 委託検査管理台帳
2 試薬管理台帳
3 温度・設備管理台帳
4 統計学的精度管理台帳
5 外部精度管理台帳
6 検体保管・返却・廃棄処理台帳
7 検体依頼情報・検査結果情報台帳
8 検査結果報告台帳
9 苦情処理台帳
10 教育研修・技能評価記録台帳
※血清分離のみを行う衛生検査所にあっては、2~7、10の作成を要しない。
- 組織運営規程
衛生検査所の組織運営、その他必要な事項を定めた組織運営規程を有すること。
その他
(1)精度管理に必要な措置が講じられていること。
(2)営業所に関する書類
当該衛生検査所と同一経営主体の衛生検査所、営業所、出張所、検体搬送中継所等に関して、名称及び 所在地が明らかとなっていること。
※検査案内書に明記されていればこれに替えることができる
登録までの期間
衛生検査所の登録までの期間は、申請をする自治体により差がありますが、1ヶ月〜3ヶ月が標準処理期間となっております。
この標準処理期間とは、あくまでも申請が提出先機関とされている事務所に到達してから申請に対する処分、今回の場合でいうと登録をするまでに要する期間ですので、衛生検査所の場合必ず行われる申請前の図面持ち込み相談などの事前確認や打ち合わせはこの期間に入りません。
また、詳細は記しませんでしたが、検査項目により登録基準として必要な検査機器がありますし、それ以外にも実際には必要となる機器がある場合もございます。
その検査機器を準備するにしても時間を要します(特にこの記事執筆時、検査機器を実際に入れるためにかなりの時間を要しています)
さらに、人的要件をクリアするためのリクルートをかけ、その後実際に採用となるまでもかなり時間がかかる印象です。
そして、衛生検査所の設置予定の建物によっては、さらに他の担当部署との折衝や許可を取らなければならないケースもあります。
「意外と時間がかかってしまうこと」
をしっかりと頭に入れて計画を組んでいただくことが大事と言えます。
最後に
今回、衛生検査所の登録要件などをごく簡単にですがご紹介いたしました。
これと付随する形で薬機法の許可をいくつかとることになったり、個人情報関連の認定、外部精度管理調査…等運用で気をつけていただきたいことや、入札を見越した認証の取得等の登録後の+α色々あるのですが、それはまた今度の機会で記事にしたいと思います。
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